2025/10/24
● 長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会
(炭鉱水没事故を朝鮮人強制連行の加害責任として追及)
1942年2月3日、石炭増産の国策で山口県宇部市沖の海底炭鉱で強制労働させられていた朝鮮人らが生き埋めとなる水没事故が起きた。朝鮮人136人と日本人47人は石炭採掘現場の切羽から坑口まで蟻の巣のように拡がった地下坑道の隅々まであふれてきた海水や地下水から逃れられずに放置されたまま。
事故は戦中の「歴史」からは抹消され、閉鎖された坑口も草むしてゴミに埋もれ、戦後は数少ない地元の人々の間で語り継がれるだけだったが、1970年代に郷土史家や地元教師らが史実を掘り起こし、キリスト者や仏教僧侶らとともに追悼行事などを行うようになったのが「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」(91年発足)の始まりだった。
現共同代表の一人、井上洋子さんらは韓国や朝鮮民主主義人民共和国の遺族・関係者と交流する中で「遺族に遺骨を返すことこそ使命」だと考え、昨年9月には坑口を掘り当てて整備、ダイバーの協力も得て頭蓋骨など一部を収容した。日本政府が一切動かない中での市民団体の尽力と使命感に敬意を表し、「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」に多田謡子反権力人権賞を贈ります。
● 重信メイさん
(ガザでのパレスチナ人虐殺を真実の抹殺として告発)
パレスチナ・ガザ地区でのハマースと解放勢力による2年前の10・7一斉蜂起に対しては、違法占領を続けるイスラエルのシオニスト政権軍による「報復」名目の大虐殺が続いてきた。犠牲者は女、子ども、高齢者を中心に10万人を超え、同地区インフラの98%が破壊された。国連機関もジェノサイドを認める民族浄化策だ。イ当局はこの2年間、外国人記者のガザ入域を禁止。この最大の犠牲が「真実の国際報道」だが、これと果敢に闘い、住民の生活と虐殺の実相を伝えてきたのが現地に生まれ、現地で暮らすパレスチナ人記者及び市民記者らだ。
レバノン生まれの重信メイさんは、カタールを拠点に「アルジャジーラ・ジャーナリズム・レビュー英語版の担当者として『週刊金曜日』などの日本メディアも通し、記者自身がイ軍の武器とされた「飢餓」化の対象として殺されている実相を発信している。
現地記者を招くことが極めて困難な中、メイさんに多田人権賞を受賞いただくことで、米欧日政権による〝和平〟のウソや、ナクバ以来のパレスチナ殲滅政策を暴き、真実伝える人々に敬意を表したい。
● 瀬戸大作さん
(貧困問題と取り組む。非正規滞在外国人の人権を守る闘い)
瀬戸大作さんは、格差が拡大する中で、原発事故避難者の救済の経験から貧困問題と取り組まれ、2007年設立の反貧困ネットワークの中心で活動、2020年には「新型コロナ災害緊急アクション」を、コロナ禍以降も、むしろ深刻化する貧困問題と取り組んできました。
女性の比率が高く、うつ病など重篤な精神疾患を抱える相談者が非常に多い貧困の問題は世代をこえて影響し、食や生活環境、教育、人権など、さまざまな社会問題を内包した、社会の構造的な問題です。
また、貧困問題が深刻化するなかで排外的な風潮が広がり、入管庁の「不法滞在者ゼロプラン」を受けて、日本に生まれ、日本を故郷とし、日本語を母語とする非正規滞在外国人の子弟が、働くことも学ぶことも拒絶されたうえに、親たちとともに、続々と強制送還されています。瀬戸さんたちは貧困と一続きの問題として、強制送還の恐怖にさらされる非正規滞在外国人の生活と人権を守り、日本で生き続けるための活動にも力を入れています。
貧困問題と排外主義を一続きの問題としてとらえ、一人一人の相談者、当事者の生活を具体的に支援しながら、問題の社会的な解決に向けて奮闘される瀬戸大作さんに多田謡子反権力人権賞を贈ります。