第29回多田謡子反権力人権賞受賞者選考理由
 
2017/11/06
 
● 全国一般東京東部労働組合メトロコマース支部
     (非正規労働者の差別撤廃)
 全国一般東京東部労組メトロコマース支部は、2009年3月、東京メトロ駅売店の非正規労働者によって結成されました。東京メトロ駅売店では正社員と契約社員が働いており、職務内容は同じでも、契約社員は、正社員にある昇給も退職金も住宅手当も忌引き休暇も、食事補助さえないという差別的待遇の中で、雇止めを恐れながら契約更新を繰り返してきたのです。メトロコマース支部は、2009年11月、有給の忌引きと食事補助を勝ち取ったのを皮切りに、2度のストライキで、定年を迎えた組合員の雇用延長を勝ち取るなど、闘いを進めてきました。
 本年3月、東京地裁は、有期雇用者・無期雇用者間での非合理的差別を禁止した労働契約法20条違反として、提訴していた組合側の請求をほぼ全面的に棄却する不当判決を言い渡し、メトロコマース支部はただちに控訴して、現在、控訴審が進行しています。
 全国2千万の非正規労働者の圧倒的多数が、疲れ切り、声を上げることすらできない中、不当な差別に対する怒りをバネに立ち上がり、多くの仲間たちに勇気を与え、仲間たちとともに困難な闘いを継続しているメトロコマース支部に敬意を表し、多田謡子反権力人権賞を贈ります。
 
 ● 徐翆珍(じょすいちん)さん
     (民族意識を原点とした平和・人権の闘い)
 
 徐翆珍さんの闘いは、1971年、大阪市立に移管される保育園から国籍条項により解雇されたことに対する、解雇撤回、国籍条項撤廃闘争の勝利からはじまり、1985年の指紋押捺拒否闘争、1997年の在日米軍駐留費負担(おもいやり予算)違憲訴訟、2006年からの「一人から・私から行動を・平和憲法市民アクション」毎月ビラまき、2014年の安倍首相靖国神社参拝に対する違憲訴訟への参加と、長い年月の大変な闘いの連続でした。そうした闘いを経て、徐翆珍さんは2007年には、市民運動に開かれた共同作業の場として、レンタルオフィスSORAを開設し、今日まで、差別や貧困や戦争のない世界に向けて闘い続ける人々を支えてきました。
 徐翆珍さんは中国上海で生まれたご両親を持つ在日中国人二世です。民族意識の高いご両親のもと、中華同文学校(民族学校)で学んだ徐さんの闘いは、常に、日本で「敵国人」として生きてきたご両親の世代以来の経験、差別の記憶を踏まえたものでしたが、さらに視野を広く持ち、平和・人権の課題を幅広い人々に訴える闘いでもありました。民族の意識を原点に、長く闘ってこられた徐翆珍さんに敬意を表し、多田謡子反権力人権賞を贈ります。
 
 ● 伊波義安さん
     (沖縄における反巨大開発、反基地闘争)
 
 伊波義安さんは、 長年高等学校で教鞭をとる一方、沖縄の環境を守る住民運動、基地撤去・平和運動に係わり続けて来ました。国家権力によって人が人として生きる権利や環境を奪われた沖縄では、そこに係わらざるを得ない状況がいまだに続いています。
 伊波さんは、沖縄アルミ誘致反対運動(1972年)、それに続く金武湾CTS建設反対運動、具志川石炭火力発電所建設反対運動、やんばるの山を守る運動、与勝海上基地建設(300万坪の埋立)反対運動など、住民とともに自然破壊に立ち向かってきました。特に、金武湾CTS反対闘争では中心的存在として活動されました。そしていま、辺野古新基地建設反対運動(2004年〜)、東村高江のヘリパッド建設反対運動(2007年〜)、カデナ基地の閉鎖・撤去運動でも、積極的に現場闘争を担っています。
 銃剣とブルドーザーで土地を取り上げたアメリカ 軍、そして沖縄の海を、ウチナーンチュから取り上げて基地を作ろうとする日本政府に坑うため、早朝から連日辺野古ゲート前座り込みや、ジャリ運搬のダンプを砕石所前で止める等、果敢に国家権力に立ち向かい、沖縄人が、心安らぐ平和な日々が訪れるまで闘い続ける伊波さんの志に、多田瑶子反権力人権賞を贈ります。