第28回多田謡子反権力人権賞受賞者選考理由
 
2016/11/08
 
 ● 東京拘置所のそばで死刑について考える会     (死刑廃止運動)
 
 東京拘置所のそばで死刑について考える会(そばの会)は、1996年末の死刑執行を受けて、「本当にこれ以上執行させたくない、そのために私たちに何ができるだろうか、と話し合う中から」発足した団体です。毎月1回、東京拘置所のそば、綾瀬駅前で「死刑について考えてみませんか?」というビラを配ってきました。
 世界では死刑制度は止めようという流れが大勢になる中、日本では、刑事裁判のみに「裁判員裁判」を導入して裁判所への批判を逃れる一方、犯罪被害者の報復感情に依拠する「世論」をも利用しながら、国家権力による殺人が継続されている現状を、多数の確定死刑囚が収容されている東京拘置所のそばで訴え続けてきたのです。
 そばの会の20年に及ぶ「ビラ」のテーマを読み直してみれば、あらためて、日本における「死刑」の現状についての危機状況が浮き彫りにされます。
 日本弁護士連合会は、今年、福井の人権大会で、「死刑廃止」の推進を決議しました。「そばの会」の20年に及ぶ活動に敬意を表し、多田謡子反権力人権賞を贈ります。
 
 ● 篠原弘典さん (反原発の闘い)
 
 篠原弘典さんは1966年東北大学に入学し、原子力の平和利用によって社会に貢献することを願って原子核工学科に進みましたが、全国学園闘争の波の中で自らの学問と社会のかかわりを問い返し、原子力の危険性を知るに至って反原発の歩みを始めました。
 1970年、女川町で開かれた「第1回原発反対漁民総決起集会」に参加して漁民の心に触れた篠原さんは、仲間たちと女川で長屋の一室を借り、原発の危険性を訴えるビラをつくって漁民に働きかけることになります。卒業後は、原子力企業などに就職する同窓らと袂を分かち、とび職として生活を築きながら、一貫して女川原発差止訴訟原告団(団長・阿部宗悦さん)をはじめとする運動の牽引役となり、その後は「みやぎ脱原発・風の会」を主導してきました。
 今、女川の運動を長年支えた仲間は、東日本大震災とその後の苦難の中で、ほとんどが亡くなっています。彼らの遺志を継ぎ、脱原発東北電力株主の会代表、女川原発の再稼働を許さない!みやぎアクション世話人、放射能問題支援対策室「いずみ」顧問などで、脱原発社会実現のため活躍している篠原さんの長年にわたる闘いに敬意を表し、多田謡子反権力人権賞を贈ります。
 
 ● 沖縄から基地をなくし世界の平和を求める市民連絡会
                                       (反基地・平和のための闘い)
 
 2000年の沖縄サミットに向けて情報を発信するため、沖縄の市民団体を中心に結成された「平和市民連絡会」は、サミット終了後、正式に、沖縄から基地をなくし世界の平和を求める市民連絡会(略称・沖縄平和市民連絡会)として発足し、反戦反基地、人権・女性・環境等の問題に取り組む33団体と個人によって構成されています。「私たちの願う平和とは、地球上の人びとが、自然環境を大切にし、限られた資源や富をできるだけ平等に分かち合い、決して暴力(軍事力)を用いることなく、異なった文化・価値観・制度を尊重しあって、共生すること」という『沖縄民衆平和宣言』を信として、「いまこそ、暴力の悪循環を断ち切り、平和のために行動しよう」と連続行動を展開中です。
 緊迫する辺野古へ、毎週木曜日、金曜日、辺野古キャンプ・シュワブゲート前行動に参加して進行を担当し、毎週土曜日、北部訓練場オスプレイパッド建設阻止のため大型バスをチャーターし、40〜50名が早朝5時に県庁前から2時間かけ高江の抗議行動に参加しています。
 「基地の県内移設に反対する県民会議」「島ぐるみ会議」のメンバー、沖縄の市民運動の中心的組織として活動する沖縄平和市民連絡会に敬意を表し多田謡子反権力人権賞を贈ります。