第26回多田謡子反権力人権賞受賞者選考理由
 
2014/11/03
 
 ● 川内原発建設反対連絡協議会     (川内原発再稼働阻止の闘い)
 
《受賞理由》
 川内原発建設反対連絡協議会は、1973年に川内原発の建設に反対する14の団体により結成されて大衆的な闘争を繰り広げ、1975年には九州電力による川内原発敷地のボーリング・コアの差し替えを暴くなど、反対運動の中心を担ってきました。その後、九州電力と原発推進派の巻き返しで住民が抑え込まれ、大規模な反対運動の動きが取りにくくなった後も、地道に反対運動を継続してきました。
 福島原発事故後、住民に川内原発再稼働反対と脱原発の意識と意見が広がる中、民意を無視して再稼働へと突き進む鹿児島県知事と薩摩川内市長の画策と、福島原発事故の教訓に学ばず抜本対策を先送りして再稼働の実績作りにひた走る原子力規制委員会の手により、今、川内原発が再稼働1号とされようとしています。
 福島原発事故までの長期にわたる困難な環境下で継続されてきた運動に敬意を表し、今後の厳しい闘いへの期待を込めて、多田謡子反権力人権賞を贈ります。
 
 ● こるむ(在特会らによる朝鮮学校に対する襲撃事件裁判を支援する会)
                        (朝鮮学校襲撃との闘い)
《受賞理由》
 今吹き荒れるヘイトスピーチの起点の一つが、「在日特権を許さない市民の会」らによって、2009年12月から翌年3月まで強行された旧京都朝鮮第一初級学校への襲撃です。保護者や教師らは刑事告訴。さらに心的物的被害への損害賠償と学校周辺での街宣禁止を求め京都地裁に提訴しました。
 「こるむ」はこの裁判の支援団体です。「ヘイトクライムのない社会を。民族教育権を保障しよう」を掲げ、保護者と教師ら学校関係者と弁護団、支援者たちを密接に繋ぎ、問題を社会に訴えてきました。
 2013年10月、京都地裁判は、学校周辺での街宣を禁じると同時に、差別街宣を人種差別と断じ、高額賠償を命じる判決を言い渡し、14年7月、大阪高裁は「在日朝鮮人の民族教育を行う社会環境」を法で守る利益とする史上初の判断を下しました。
 在日朝鮮人の民族教育権保障への一歩となる判決を導き出した法廷闘争を支えた「こるむ」に多田謡子反権力人権賞を贈ります。
 
 ● 袴田巌さん        (無実の死刑囚。再審と刑の執行停止を勝ち取る)
 
《受賞理由》
 袴田巌さんは1966年清水市で起きた殺人事件で犯人としてでっち上げられ、論旨整然と無実を主張しましたが1968年静岡地裁で死刑判決、そして80年に最高裁で死刑が確定しました。しかし不屈の闘いで今年2014年3月27日、静岡地裁が再審開始を決定、死刑および拘置の執行停止によって48年ぶりに釈放されました。
 静岡地裁が、捜査機関により捏造された疑いのある証拠で有罪とされて死刑に直面し、これ以上拘置を続けることは耐えがたいほど正義に反するとまで言って釈放したにもかかわらず、検察は即時抗告し、現在再審は開始されていません。袴田さんの存在は日本に死刑があってはならないことをはっきり示しています。
 支え続けた姉の秀子さん、弁護団、支援団体の懸命の努力もあって袴田さんは救出されました。その活動を労い、長期の拘禁で心身とも弱り果てた袴田さんの回復を願い、一日も早く再審無罪を勝ち取ることを願って、多田謡子反権力人権賞を贈ります。