第24回多田謡子反権力人権賞受賞者選考理由
 
2012/11/06
 
 ● 松沢弘さん
             (フジサンケイグループの合理化政策・労働組合潰しとの闘い)
 
《受賞理由》
 松沢弘さんは1971年、日本工業新聞社に入社、フジサンケイグループによる数々の合理化・労働強化策に協力してきた産経労組をまともな組合にするための活動を続けましたが、1994年1月、リストラと闘うために反リストラ産経労を結成して委員長に就任しました。会社は産経労組としか交渉しないとの労働協定を盾に新組合を認めず団交を拒否し、組合機関紙も回収、松沢さんを東京本社から千葉支局に配転して組合活動を妨害、同年9月には懲戒解雇しました。
 本年10月25日、東京高裁は懲戒解雇を不当労働行為と認めない反動判決を出しましたが、松沢さんはそれに屈することなく、解雇撤回を求めると共に、フジサンケイグループのトップに君臨し続ける日枝久フジ・メディア・ホールディングス会長の経営責任を追及して闘い続けています。
 労働者としての人生をかけて、組合活動の正当な権利のために41年間にわたって闘い続ける松沢さんに敬意を表して反権力人権賞を贈ります。
 
 ● 相沢一正さんと根本がんさん  (東海村での反原発闘争)
 
《受賞理由》
 相沢一正さんと根本がんさんは、原子力施設が集中し「原子力の村」を標榜していた茨城県東海村での反原発の闘いで長年にわたりその中心となってきました。1973年に伊方原発訴訟に続いて提訴された東海第二原発訴訟での30年に及ぶ闘い、原発と再処理工場に反対し繰り返し発生する事故・不祥事の際に事業者を厳しく追及するとともに事故等がないときでも地道に追及・糾弾を続ける活動、その基盤としての東海原発・再処理に反対する市民の会や反原子力茨城共同行動の結成と運営、動燃の火災爆発事故を契機とした脱原発とうかい塾の開講、JCO臨界事故を契機とした相沢さんの村議立候補と議会等での活動、JCO臨界事故被害者の裁判を支える会など、茨城県・東海村での反原発の闘いはいつも相沢さんと根本さんが先頭に立ちあるいは支えてきました。
 2人の厳しい地域の条件の下での40年あまりに及ぶ反原発闘争に敬意を表し、今後のさらなる闘いを期待して多田謡子反権力人権賞を贈ります。
 
 ● 神田香織さん  (講談で社会問題を訴える活動)
 
《受賞理由》
 講談師・神田香織さんは日本の古典芸能である講談を、講談本来のジャーナリズムとしての機能を蘇らせ、社会の不条理を告発する新作講談を創作して来ました。新版「はだしのゲン」で原爆を、「チェルノブイリの祈り」では原発を、「悲しみの母子像」では米軍基地を、そして「シルエットロマンスを聞きながら」では冤罪と死刑制度に対する告発を、その巧みな話術で人々に語りかけています。
 また講談サロン香織クラブを立ち上げ、「乱世を生き抜く語り口をもて」と後進の指導にあたり、その中の何人もが、「いざ、言葉で勝負!」とこの社会に立ち向かっています。
 福島県いわき市出身の神田さんは、3.11震災原発事故がおこるとただちにNPO法人「ふくしま支援・人と文化ネットワーク」を立ち上げ、その代表として被災地支援の先頭に立って活動するとともに反原発を掲げて闘い続けています。神田香織さんの長年にわたる活動に敬意を表し、多田謡子反権力人権賞を贈ります。