第23回多田謡子反権力人権賞受賞者選考理由
 
2011/10/29
 
 ● ASIAN PEOPLE'S FRIENDSHIP SOCIETY
                              (非正規滞在外国人の権利擁護の闘い)
 
《受賞理由》
 1987年、急増していたアジアからの人々と日本人の協力によって設立されたASIAN PEOPLE'S FRIENDSHIP SOCIETY(以下APFS)は、弱い立場で声を上げられない外国人の権利を守るために長年活動してきました。とりわけ近年、来日した外国人の長期滞在が進行し、国際結婚や定住傾向が進み、在留期間を経過して滞在するいわゆる非正規滞在外国人に対して日本政府が過酷な政策をとり続け、日本で生まれ、育った子供まで強制送還されるという事態の中で、APFSは多くの非正規滞在外国人とともに、合法的な滞在を勝ち取る闘いを進めています。
 非正規滞在者であっても人権は守らなければならないという方針にもとづいてねばり強く闘い、法務省に外国人政策の変更を余儀なくさせるところまで闘いを進めているAPFSの活動に心からの敬意を表し、多田謡子反権力人権賞を贈ります。
 
 ● 佐々木靜子さん
                    (富士見産婦人科病院事件との闘いと女性のための医療)
 
《受賞理由》
 佐々木靜子さんは1980年、多くの患者から健康な子宮や卵巣を摘出し、利益を上げていた富士見産婦人科病院事件の被害者同盟弁護団医師団として、権威・権力的な専門医師集団に抗し、被害者たちの30年間にわたるたたかいに寄り添い勝訴に導きました。
 91年、女性と心に優しい病院として、まつしま産婦人科小児病院を開業、女性の立場にたって診療するジェンダー・スペシフィック・メディスン(性差医療)を実践し、利用する女性にとっても働く女性にとっても信頼できる、頼りになる場をつくるために活動してこられました。またNPO法人「女性の安全と健康のための支援センター」の設立に関わり、ドメスティック・バイオレンス(家庭内暴力)をなくすために活動しておられます。佐々木靜子さんの、女性の人権を守り確立することを目指す長年の活動に敬意を表し、多田謡子反権力人権賞を贈ります。
 
 ● 石丸小四郎さん(福島原発との闘い)
 
《受賞理由》
 石丸小四郎さんは、「原発は放射能による環境汚染や労働者被曝による健康被害を不可避なものにする」という認識から、1972年に結成された双葉地方原発反対同盟に参加し、福島原発でたびたび起きた放射能漏れ事故を告発、福島第二原発の建設反対運動にも取り組むとともに、原発労働者の被曝問題にも当初から取り組み、労災認定の支援活動も続けてきました。原発銀座とも言われた集中立地で建設が進み、切り崩しによって運動が縮小していく困難な状況の下で40年にも及ぶ反対運動を続けてきたことは驚嘆に値します。十分な地震・津波対策もなく運転継続されていた福島第一原発がまき散らした放射性物質は、双葉地方一帯を甚だしく汚染し、石丸さんたちをも故郷から追い立てましたが、石丸さんは再度いわきの地から原発に対する告発の運動を再開しています。石丸さんの40年に及ぶ原発との闘いへの共感と今後の運動への期待を込めて、多田謡子反権力人権賞を贈ります。
 
 ● 脱原発福島ネットワーク(福島原発との闘い)
 
《受賞理由》
 脱原発福島ネットワークは、1988年以来、福島第二原発3号機の再循環ポンプ破損事故や東京電力の燃料輸送容器データねつ造問題、圧力容器・炉心シュラウド・再循環系配管等のひび割れ隠し問題、格納容器漏洩率検査データ改ざん問題、制御棒破損問題など福島第一原発、第二原発での数々の事故や東京電力の不正行為を追及するとともに、福島第一原発3号機でのプルサーマル計画や第一原発の7,8号機増設計画に対して反対し、県民投票条例の制定運動やエネルギー政策市民検討会の実施、東京電力・行政との交渉を続けるなど粘り強い運動を続けてきました。
 原発集中立地県での日本最大の電力会社である東京電力との闘いという困難な条件の下での20年余にわたる運動の継続に敬意を表し、今なお運転再開に向けて画策する官僚・東京電力との今後の闘いに期待して多田謡子反権力人権賞を贈ります。