第22回多田謡子反権力人権賞受賞者選考理由
 
2010/11/03
 
 ● 人権と報道・連絡会 (マスコミ報道による人権侵害との闘い)
 
《受賞理由》
 人権と報道・連絡会はマスコミ報道による人権侵害を防止することを目的として1985年に発足しました。事件報道における匿名報道主義を提唱し、市民的基盤を持つ報道評議会の設立をめざしています。
 そのために、つねに権力側ではない視点から報道するのがメディアであるという、ある意味では当たり前のことを、その時々の具体的な事例を取り上げ、集会を開き、通信を発行して、発言し続けてきました。
 連絡会は、とりわけマスコミの犯人視報道が警察・検察を支える形で冤罪事件を作りだしていること、報道は被害者の人権をも侵害することなどに警鐘を鳴らし続ける一方、事件報道にとどまらず、普天間報道やナショナリズムを鼓吹する尖閣列島報道など、報道全体の在り方を常に検証し続け、市民はもちろんマスコミの記者たちに向けて25年間にわたって発言し続けています。こうした活動に心から敬意を表し反権力人権賞を贈ります。
 
 ● 山谷労働者福祉会館活動委員会
                              (日雇い労働者の人権・生存権のための闘い)
 
《受賞理由》
 山谷労働者福祉会館活動委員会は、日雇い・野宿労働者がともに生き、闘っていく拠点である山谷労働者福祉会館の運営と活動に責任を負い、生活保護希望者には、誰でも路上から生活保護が受けられるように、テント生活希望者には、行政のいやがらせや追い出しから生存権を守るべく闘っています。
 週1回の共同炊事では皆が一緒に食事をし、寄り合いで報告を受け、スケジュールを決め、野宿の当事者が中心となって運動を進める闘いは定着し、12月下旬から翌年1月にかけての越年越冬闘争、5月の野宿者メーデー、8月の夏祭りと、会館は山谷の地に根を下ろしています。
 アルミ缶条例や公園からの排除との闘いなど、日雇い・野宿労働者排除・排斥に抗して闘う各地の人々との連帯を強めつつ、生存権−人権のために奮闘している山谷労働者福祉会館活動委員会に心から敬意を表し、反権力人権賞を贈ります。
 
 ● 柏崎刈羽原発反対地元三団体 (柏崎刈羽原発反対闘争)
 
《受賞理由》
 柏崎刈羽原発反対地元三団体は、7基821万2000kWという世界一の原発集中立地点となった柏崎刈羽原発の地元で、30年以上にわたり、住民運動と労働運動が一体となって反対運動を続け、運転開始後も、敷地直下や周辺の活断層の存在を主張して、耐震安全問題を指摘して闘ってきました。
 2007年7月には、中越沖地震が発生し、想定を遙かに超える地震動で大きな被害を出し、7基の原発がすべて停止に追い込まれました。原子力発電所の国の安全審査(耐震評価)が含む大きな問題点を明らかにしてきた闘いは高く評価されます。
 しかし、2009年、自民党政権が6号機と7号機の運転再開にゴーサインを出し、原子力推進の姿勢を強める民主党政権は、想定を遙かに超える地震力を受けた1号機の運転再開を強行、建屋の壁にひびが入った5号機の運転再開も強行されようとしています。
 地元三団体の長期にわたる闘いの継続に心から敬意を表し反権力人権賞を贈ります。