第19回受賞発表会
 
2007/12/15
 
 第19回受賞発表会と記念パーティーは2007年12月15日に東京・お茶の水の総評会館で行われ、受賞された次の2個人、1団体が闘いの報告を行いました。
 
 ● 坂本美代子さん、小笹恵さん (水俣病関西訴訟元原告)
 ● 屋嘉比ふみ子さん (女性差別賃金との闘い)
 ● 志布志・住民の人権を考える会 (違法捜査との闘い)
 


坂本美代子さん、小笹恵さん (水俣病関西訴訟元原告)

《受賞理由》
 公害の原点と言われる水俣病の50年は、被害の実態を限りなく軽微に見せかけ、患者の認定基準を限りなく狭くする一方で、加害企業チッソだけでなく、行政にも重大な加害責任があることを認めようとしない国と熊本県に対する、患者たちの生きるための闘いの歴史でした。
 水俣病関西訴訟は、(1)水俣病を発生させ、被害を拡大させ、被害者の救済を放置し切り捨てた、国・熊本県・チッソの責任を法的に明らかにすること。(2)原告患者を水俣病と認めさせること。(3)原告患者が蒙ってきた、健康被害をはじめとする筆舌に尽くせぬ様々な被害の償いを求めること、の3つを求めて1982年に提訴され、22年間もの苦しい闘いを経て、2004年、国と熊本県の賠償責任を認めるとともに、国の認定基準で水俣病と認められなかった原告を水俣病と認めた高裁判決を維持する最高裁判決を勝ち取りました。この闘いは、権力と甘言、策略を弄して患者の中に分断を持ち込み、闘いの終息を画策した国、熊本県、チッソによって、時に孤立を余儀なくされながらの苦しい闘いでした。
 水俣病患者の坂本美代子さん、小笹恵さんはともに関西訴訟の原告であり、最高裁判決以降も認定基準を見直さず、居直り続ける国、熊本県、チッソとの闘いを続けています。当基金は文字通り人生をかけた闘いによって、国、熊本県、チッソの責任を確定させ、今も闘いを続けるお二人に心から敬意を表し、連帯の意志を込めて受賞者として選考しました。

屋嘉比ふみ子さん (女性差別賃金との闘い)

《受賞理由》
 屋嘉比ふみ子さんは1981年に(株)京ガスに入社。直後から会社と企業内組合の双方での女性差別に直面して、差別と闘い続けてきました。1984年には女性と嘱託社員のみをねらい打ちにした指名解雇を自力で撤回。その後、いやがらせ的な強制配転によって配属された新しい部署でも、男女の差別賃金是正のために、会社および男性優位の企業内組合との闘いを続けてきました。
 1998年、国際基準である同一価値労働同一賃金原則(ペイ・エクイティ)に違反するとして、京ガスでの男女賃金格差の是正を求めて京都地裁に提訴。日本で初めて、「知識・技能、責任、精神的な負担と疲労度を検討して職務の価値に差はない。本件の賃金格差は女性差別であり、労基法4条違反」という判決を引き出し、2005年大阪高裁で勝利的な和解を勝ちとりました。
 この間、経営状態が悪化していた京ガスは、2006年8月、突然事業閉鎖を労組に通告しましたが、屋嘉比さんはそれまで対立していた企業内の職員組合や工員の労働組合と連帯して、職場を占拠して闘いました。半年間の倒産争議は2007年2月に終結。解決金として33名の組合員の1年分の年収保障と、京都地裁が認定した同一価値労働同一賃金原則に則った、屋嘉比さんにかかる男女賃金差別是正を獲得して勝利的な解決を勝ちとりました。
 屋嘉比さんが追求してきたペイ・エクイティは、職務評価によって労働の価値を客観的に比較して差別賃金を是正する運動として、男女差別のみならず、非正規雇用労働者の均等待遇獲得への新しい地平を切り開くものです。 個別の企業との闘いに始まった屋嘉比さんの困難な闘いは、非正規雇用が拡大する今日、改めて多くの女性たちの差別との闘いに合流しつつあります。当基金はこうした屋嘉比さんの闘いに連帯し敬意を表する意味を込めて、受賞者として選考しました。

志布志・住民の人権を考える会 (違法捜査との闘い)

《受賞理由》
 2003年4月13日の投開票日の翌早朝から開始された中山信一鹿児島県議をめぐる公選法違反事件(いわゆる志布志事件)は、鹿児島県警本部の大々的な捜査体制の下に、考えられる限りのあらゆる違法捜査のオンパレードによるデッチ上げ事件であり、本年2月23日、12名の被告人全員(1名は公判中に死亡)に無罪判決が下されました。
 (1)キリシタン弾圧の踏み絵を思わせるような川畑幸夫氏に対する踏み字事件、(2)検察官の指示による弁護人の接見内容の調書化、(3)家族の激励の手紙を接見中に見せたことを理由とする裁判官による国選弁護人の解任、(4)証人採用された警察官の尋問前の対策会議で取調小票の存在が明らかになると、隠蔽に走る検察と警察、等々、こんなことがあっていいのかと思わせるデッチ上げの捏造、隠蔽に走る警察官・検察官・裁判官の実態が次々に明らかになっています。志布志事件は現在の司法の暗部を映す鏡であり、暗部を切り裂いて冤罪根絶を実現するための司法権力の喉元に突きつけた鋭いメスです。
 「住民の人権を考える会」は、違法な逮捕・再逮捕・再々逮捕が続く中で、志布志の住民有志により結成され、被告人や家族の支えとなったばかりでなく、警察官からの内部告発がいくつも寄せられるなど、冤罪に打ち勝つ志布志の地域コミュニティの力を引き出しました。当基金は、敗戦直後に冤罪を証明して司法権力に警鐘を乱打した松川事件・八海事件の闘いを引き継ぎ、日本の司法を根底から覆す内実を提起する志布志事件の闘いを終始一貫して支え、今なお捜査の可視化をはじめとした司法の変革の運動を継続されている「住民の人権を考える会」の活動に敬意を表し、連帯の意志を込めて受賞者として選考しました。