多田道太郎先生を追悼します
 
2008/02
 
   故多田謡子弁護士の父親であり、多田謡子の遺産を友人たちに託して当基金の発足を依頼され、以後、夫人とともに当基金を支援していただいた多田道太郎京都大学名誉教授が、昨年12月2日に逝去されました。
 弱い者、虐げられた者、闘い続ける者とともに生きようとした故多田謡子弁護士のたどった道筋は、父親である多田道太郎先生の存在なしにはあり得ません。
 最愛の娘を失った多田先生ご夫妻は、「娘の遺産を親が継いでも、とても使うことは出来ない。娘が生きていれば応援したであろう人々に渡してほしい」と、娘の友人たちに遺産を託し、以後、当基金の運営には一切関わることなく、健康を害されるまで、一応援者として当基金を支援してくださいました。
 先生はある著作の中で、徴兵され疥癬を患った一兵卒として迎えた敗戦の日のこと、満足な治療を受けられず、命からがら病院から脱出した日のことを書かれています。多田先生をはじめ、不条理きわまる戦争の経験をふまえて、戦後の日本の有り様を批判した知識人の一団が、否応なく歴史から退場している今、私たちは多田謡子ともに、多田道太郎先生のことを決して忘れず、時流に流されない批判的な精神を受け継いでいこうと思います。
 心からご冥福をお祈りいたします。(K)