第27回多田謡子反権力人権賞受賞者選考理由
 
2015/11/03
 
 ● 斉間淳子さん     (伊方原発反対の闘い)
 
《受賞理由》
 斉間淳子さんは、伊方原発から直線距離で約10kmの八幡浜市に居住し、1981年9月におきた伊方原発近海での魚の大量死をきっかけに、子どもたちを守りたいという気持ちから、原発反対運動を始めました。チェルノブイリ原発事故後の1988年2月、四国電力が伊方原発の出力調整実験を行うことを発表したのに対し、斉間さんが中心となって「八幡浜・原発から子どもを守る女の会」を結成し、伊方町へのビラ入れや反対署名を繰り広げ、全国的な反対運動の広がりを地元で支えてきました。
 地元で反対運動を続ける斉間さんに対しては、匿名の人物からの脅迫電話や嫌がらせの手紙、ニセ注文などの卑劣な嫌がらせが続けられましたが、斉間さんはこれに屈することなく闘いを続け、現在も、伊方原発3号機再稼働反対運動の中心的存在となっています。安倍政権と原発推進派が、川内原発に続き伊方原発3号機の再稼働を目論み、今後も厳しい状況が予測される中、さらなる闘いの継続と昂揚に期待して多田謡子反権力人権賞を贈ります。
 
 ● 方清子(ぱんちょんじゃ)さん (日本軍「慰安婦」問題解決のための闘い)
 
《受賞理由》
 日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク(関西ネット)の共同代表である方清子さんは、日本でまだ「慰安婦」問題が広く知られておらず、取り組みもなかった1990年代はじめから、在日の女性としての主体性をかけて、日本軍「慰安婦」問題解決のために闘ってこられました。2009年に結成された関西ネットは、政府に誠実な対応を求める自治体意見書運動や大阪駅前の水曜デモ、被害者自身を迎えての集まりなど、様々な闘いを取り組んでいます。
 困難の中で立ち上がった被害者と支援団体は、日本政府が国の関与を明確に認め、謝罪し、賠償することなどを求めていますが、安倍政権は歴史を歪曲する動きを強め、「慰安婦問題は法的に解決済み」として、日本政府の責任を否定し続けています。
 在特会など右派勢力による差別的言辞の横行や暴力的な妨害など、日本社会に拡大する排外的土壌のなかで、困難に立ち向かい、戦時性暴力の連鎖を断ち切るために闘い続ける方清子さんに、心からの連帯と、共に闘う決意を込めて多田謡子反権力人権賞を贈ります。
 
 ● 山城博治さん        (沖縄における平和運動)
 
《受賞理由》
 サンフランシスコ講和条約で沖縄が米国に売り渡された1952年、山城博治さんは米軍基地が集中する沖縄中部の旧具志川市に生まれました。「銃剣とブルドーザー」と象徴される軍事基地が沖縄の人々に与えた数々の苦渋を肌で感じながら、米軍政府、さらに日本政府の国策と向き合ってきました。沖縄県職員として、日本政府の「日の丸・君が代」強制と闘い、その後沖縄県平和運動センター事務局長として反基地闘争の最前線に身を投じ、新たな基地建設阻止のために奔走し奮闘する日々を送っています。
 東村高江のヘリパッド建設工事阻止の闘い、オスプレイ配備阻止のための普天間基地ゲート4日間の座り込み完全封鎖。そして今まさに、日本政府が新基地を建設しようしているキャンプ・シュワブ(辺野古)ゲート前、そこには常に山城さんの姿があります。
 山城さんのリーダーシップのもと、辺野古では市民と労働者が自主的に集い、信頼と友情による新たな島ぐるみの連帯を生み出しています。悪性リンパ腫との闘いにも勝利して、辺野古ゲート前に立ち続けることを期待して、多田謡子反権力人権賞を贈ります。